山本由伸投手の投球映像を見て、「細身なのに球が強い」「体幹が強そうでブレない」と感じた直後に検索する人が多いはずです。たとえば夜にハイライトを見返しながら、明日の練習で何を変えれば伸びるのか、今の筋トレが遠回りになっていないかが気になってスマホで調べる。ここで知っておく最短ルートは、腕を太くする発想ではなく「下半身→骨盤→体幹→腕」へ力が途切れず流れる形を、優先順位を守って作ることです。球速・制球・ケガ耐性は、この順番が崩れると一緒に落ちます。
映像で「体幹が強い」と感じたときに、まず疑うべき勘違いがある
「筋肉があるから球が速い」「体幹が強い=腹筋を固める」という解釈は、努力の方向をずらしやすいです。山本由伸投手を見てテンションが上がった直後ほど、種目を増やしたくなりますが、先に外すべき誤解があります。明日いきなり伸ばすより、まず“やらないこと”が決まると迷いが減ります。
筋肉が大きい=球が速い、とは限らない
球速は「筋肉のサイズ」だけで決まらず、力がボールに届くまでのロスの少なさで変わります。腕や胸を大きくしても、下半身の力が骨盤で止まったり、体幹で逃げたりすると、最後に肩肘が頑張る形になります。すると一時的に強く投げられても、制球が荒れたり、疲労が溜まった日に一気に崩れやすくなります。
具体的によくあるのは、ウェイトで上半身が強くなったのに、マウンドで踏み込んだ瞬間に上半身だけ先に開いてしまうケースです。体が強いほど「力を出せている気」がしてしまい、投球フォームの崩れに気づきにくくなります。朝イチの練習や、前日に寝不足だった日ほどこのズレが出やすく、球速より先に腕が重く感じます。
次にやるべき行動は、筋肉量を増やす前に「力がどこで途切れているか」を見る癖をつけることです。
「体幹が強い」を“固い”と解釈すると遠回りになる
体幹は固めれば良いわけではなく、「動きながら安定できる」ことが投球では重要です。投球は回旋(体をひねる動き)を使うため、体幹を固めすぎると回旋の自由度が落ち、骨盤と胸郭のズレ(後で触れるヒップ‐ショルダー分離)が作りにくくなります。結果として、回旋の代わりに腕を振って球速を出す形になりやすく、肩肘への負担が増えます。
実際に多い失敗は、プランクや腹筋を増やして「体幹は強くなったのに球が走らない」状態です。固める感覚は作れても、動きの中で骨盤と胸郭をズラして戻す“しなり”が出ない。移動が長い日や、ウォームアップが短い日ほど、固めた体幹がブレーキになりやすいです。
次に取るべき行動は、体幹を「止める力」ではなく「ズレをコントロールする力」として扱う準備をすることです。
山本由伸っぽさは、どこの筋肉かより「力の流れ」で説明できる
山本由伸投手の“ぽさ”を再現する鍵は、特定の部位を当てにいくより、力が流れる順番を崩さないことです。見た目の筋肉より、動きの中で「作る→伝える→受け取る」が成立しているかが重要になります。ここが腹落ちすると、トレーニングの選び方が変わります。

下半身で作った力が、骨盤を通って上半身へ届く
投球の力は、踏み込みで地面から反力をもらい、股関節まわりで受け止めて骨盤に乗せ、体幹を通って腕へ届きます。ここで骨盤が安定していないと、下半身で作った力が上に伝わる前に逃げます。逃げた分を腕で埋めようとすると、球速が頭打ちになりやすいです。
具体シーンとして分かりやすいのは、ブルペン後半で「下半身が使えていない感じ」が出たときです。足が疲れて踏み込みが浅くなると、骨盤に力が乗らず、上半身で頑張るフォームになります。逆に、踏み込んだ瞬間に骨盤が安定し、体幹が“崩れずに回る”と、腕の振りは軽く感じるのに球が強くなります。
派生シーンとして、野手投げやキャッチボールでも同じです。遠投で力むほど腕が先に出る人は、骨盤に力が乗っていないことが多い。次にやるべき行動は、踏み込みで骨盤が「受け取れているか」を確認し、股関節まわりから整えることです。
骨盤と胸郭がズレる瞬間が、球速の条件になる
投球で大きな差になりやすいのは、踏み込み後に骨盤が先に回って、胸郭(胸のカゴ)が少し遅れて回る“ズレ”が作れるかです。このズレがあると、体幹がバネのように働き、腕が遅れて出てくる形になります。ズレがないと、上半身が一緒に回ってしまい、腕が前に出るしかなくなります。
具体例は、投げ終わったあとに「肩が張る」タイプです。骨盤と胸郭が同時に回ると、腕の通り道が窮屈になり、肩の前側が詰まりやすい。逆にズレが作れると、腕は後からついてきて、肩のストレスが減りやすいです。
朝のアップが短い日や、気温が低い日ほどズレが作りにくく、上半身が早く開きがちです。次に取るべき行動は、ズレを作る前提となる「骨盤の安定」と「胸郭の動き」を、軽い負荷で確かめることです。

肩肘が楽に感じる投げ方は、途中で力が逃げていない
投げたときに「腕が軽いのに球が行く」感覚は、途中のロスが少ないサインです。逆に、腕が重いのに球が走らないなら、どこかで力が逃げ、肩肘が補っている可能性が高いです。山本由伸投手の映像を見て“無理がないのに強い”と感じるのは、ここが整っているからだと考えると理解しやすくなります。
練習でありがちな失敗は、球速を上げたくて最後だけ強く振ることです。最後を強くすると、腕に刺激は入りますが、力の流れの欠点は隠れたままになります。連投の日や、試合後の軽い投げ込みのときほどこの癖が出て、翌日に肩肘に違和感が残りやすいです。
次にやるべき行動は、球速の前に「腕が楽かどうか」を基準にフォームとトレーニングを選ぶことです。
球速・制球・ケガ耐性を同時に伸ばすための、鍛える優先順位
迷うのはここ。球速とケガ耐性を両立させるために、先に触る場所だけ決めれば足ります。
| 優先順位 | 重点テーマ | 体の感覚の目安 | ありがちな失敗 | 先に選ぶべき方向性 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 股関節まわりの土台(踏み込み・受け取り) | 踏み込んでも腰が流れない | 膝だけで踏ん張って骨盤がブレる | 片脚支持・股関節の受け止め |
| 2 | 体幹の「動きながら安定」 | ひねっても肋骨が浮かない | 体幹を固めすぎて回旋が止まる | 呼吸・腹圧+回旋コントロール |
| 3 | 肩まわりの“受け止め” | 腕が振り抜けて前が詰まらない | 出力種目だけ増えて肩が張る | 肩甲帯の安定・回旋筋群の耐久 |
優先順位を固定すると、筋トレメニューの迷いが一気に減ります。球速を上げたいからといって肩まわりの出力から入ると、フォームの弱点が残り、制球が荒れたり、疲労が溜まった日に肩肘で代償する形になりやすいです。逆に、股関節→体幹→肩の順で整えると、同じ筋力でもボールに伝わる割合が増え、球速・制球・ケガ耐性が同時に上がりやすくなります。
具体シーンとして、ブルペンで「最初は良いのに後半で抜ける」人は、体幹より前に股関節が保たれていないことが多いです。踏み込みが浅くなり骨盤が流れ、上半身が早く開いてしまう。派生シーンとして、連戦の週や移動が多い週は下半身が先に疲れて、同じ問題が出やすいです。
次に取るべき行動は、今の自分がどの優先順位でつまずいているかを1つに絞り、そこから積み上げることです。

山本由伸のBCエクササイズを、そのまま真似ないための読み替え方
BC(ベアコンプレックス)など、話題になりやすいエクササイズは魅力的ですが、種目名を追うとズレやすいです。大事なのは、何を狙った動きなのかを「自分の段階」に置き換えることです。置き換えができると、真似が“学び”に変わります。
呼吸と姿勢が崩れると、連動が途切れる
投球動作は腹圧(お腹の内側の圧)と姿勢が崩れると、骨盤と胸郭のズレが作れず、回旋のロスが増えます。BC系の動きは、呼吸が止まったり、肋骨が開いたまま動いたりすると、狙いが消えます。見た目はできていても、体の内側では違うことが起きている状態です。
具体例として、回数をこなしたいあまりに息を止めて踏ん張ると、体幹が固まり、回旋が小さくなります。その結果、投球で必要な「ズレ→戻り」の感覚が身につきにくい。派生シーンとして、家トレで夜に短時間だけやるときは、疲労で姿勢が崩れやすく、呼吸が浅くなりやすいです。
次に取るべき行動は、種目の回数より「呼吸が回っているか」「姿勢が保てているか」を先に確認することです。
深部の安定は、重さより順番で作れる
体幹の深部(腹横筋や多裂筋など)は、重さで追い込むより、順番と姿勢で働かせるほうが再現性が高いです。いきなり高負荷にすると、表面の筋肉が主役になり、投球で欲しい“動きながら安定”が作れません。山本由伸投手のような「強いのに無理がない」感覚は、派手な高負荷より、崩れない順番の積み重ねで近づきます。
具体シーンとして、フォームローラーや軽いメディシンボールで回旋を入れたときに、腰だけで回ってしまう人は、深部の安定が抜けています。派生シーンとして、ジムで混んでいて焦っているときも、順番を飛ばして重さに行きがちです。
次に取るべき行動は、「軽い負荷で崩れない」段階を作ってから、重さとスピードを足すことです。
自分用に置き換えるときの「やめどき」がある
良いエクササイズでも、フォームが崩れて狙いが消えたら“続けるほど遠回り”になります。投球に効かせたいのに、代償動作(腰を反らす、肩をすくめる、首に力が入る)が出始めたら、やめどきです。やめどきを決めておくと、焦りが減って継続しやすくなります。
具体例は、回旋系の動きで腰に張りが出始めたケースです。体幹のコントロールが落ちて腰で回り、投球の腰痛や股関節の詰まりにつながりやすい。派生シーンとして、投げた日の夜に追加でトレーニングを入れると、疲労で代償が出やすいです。
次に取るべき行動は、代償が出る前の回数・負荷を基準に、翌日の投球が軽くなる範囲で止めることです。
今日からできる、週2〜4で回す体づくりの型
全部やらなくていい。今の練習量に合わせて、回せる型だけ先に決めてOKです。
| 週の回し方 | 例(投げる日との関係) | その週の主目的 | 体づくりの最小セット(目安) |
|---|---|---|---|
| 週2 | 投球2〜3回+トレ2回 | 土台の維持と崩れの予防 | 股関節の受け止め+体幹の回旋コントロール |
| 週3 | 投球2〜3回+トレ3回 | 連動の定着とスピード準備 | 股関節+体幹+肩の受け止め(軽め) |
| 週4 | 投球2回+トレ4回 | 伸ばす週(投球量と両立) | 片脚支持・回旋スピード・肩甲帯の安定 |
この型は「投げる日の質を落とさない」ために作ります。週2なら、やるべきことを絞って崩れを防ぎ、週3で連動を固め、週4で伸ばす週を作る。ここで大事なのは、投げた日に高負荷を足して疲労を重ねないことです。疲労が重なると、骨盤が安定せず、体幹が固まり、最後に肩肘が頑張る形になりやすくなります。
具体シーンとして、投球後に「まだ余裕がある」と感じて追い込みたくなる日があります。その日に肩まわりの出力を入れると、翌日のキャッチボールで腕が重くなり、フォームの確認が雑になりやすい。派生シーンとして、試合や紅白戦の週は、投球の強度が高いので、体づくりは“維持”に振ったほうが結果的に伸びます。
次に取るべき行動は、自分の週の投球回数に合わせて週2〜4の型を1つ選び、最低2週間は同じ型で回して体の反応を見ることです。
ケガを避けるために、筋肉より先に守るべきルールがある
ムダ足になりやすい選択を先に潰す。
| 守るべきルール | ありがちな破り方 | 破ると起きやすいこと | 先に決める対策 |
|---|---|---|---|
| 投球量と休養の管理 | 調子が良い日に投げ増し | 疲労でフォームが崩れ、肩肘が代償 | 事前に上限と休養日を固定する |
| 疲労サインで止める | 痛みを“張り”として続行 | 痛みが慢性化し戻りにくい | サインが出たら中止/軽減の基準を決める |
| 年間のオフ(投げない期間) | 1年中投げ続ける | 回復が追いつかずパフォーマンス低下 | 連続オフ期間をカレンダー化する |
投球は“積むほど伸びる”面がある一方で、疲労が蓄積するとフォームが崩れ、鍛えたはずの筋肉が守ってくれない局面が出ます。特に球速を上げたい人ほど、出力が上がった分だけ肘のストレスも増えやすいので、筋トレより先に投球量と休養のルールを持つほうが結果的に伸びます。投球数や休養の考え方は、MLBのガイドラインであるPitch Smartでも重視されています。
具体シーンとして、連続登板や連投の週は、身体が「投げられる」感覚と「回復できている」状態が一致しません。感覚でいけそうでも、フォームは少しずつ崩れていき、最後に肩肘が頑張る形になります。派生シーンとして、冬場や気温が低い日は筋肉が硬くなりやすく、同じ投球量でも負担が増えます。
次に取るべき行動は、練習開始前に「投球量の上限」「休養日」「疲労サインが出たときの中止基準」を紙かメモに固定することです。
読み終わったあとに迷わないために、最後に確認してほしいこと
ここまで読んだら、あとは「自分の現在地」を決めるだけです。山本由伸投手の筋肉を“部位当て”で終わらせず、力の流れと優先順位で自分の練習に落とし込むと、翌週の投球が変わります。
球速を上げたい人が最初に触るべきポイント
球速を上げたいなら、まず股関節で受け止めて骨盤に力を乗せる感覚を作ります。上半身の出力を足すのは、その後です。焦って腕を振るほど、球速は一瞬上がっても再現性が落ちます。次の行動は、踏み込みで骨盤が流れていないかを動画で確認し、股関節まわりの土台から整えることです。
制球を安定させたい人が戻るべきポイント
制球が荒れるときは、体幹が固まりすぎて回旋が止まるか、骨盤と胸郭のズレが作れず同時に回っていることが多いです。腕の出力ではなく、回旋のロスを減らすと制球は戻りやすい。次の行動は、体幹を「動きながら安定」に戻し、回旋のリズムを整えることです。
肩肘に不安がある人が優先すべきポイント
肩肘に不安がある場合は、肩まわりの出力を増やす前に“受け止め”を作ります。さらに投球量と休養のルールを先に固定し、疲労サインが出たら止める基準を持つことが重要です。投球で痛みが出た場合の扱いについては、American Sports Medicine Institute(ASMI)のポジションステートメントでも「痛みがある場合は投球を中止し評価を受ける」考え方が示されています。次の行動は、投げる量を減らす勇気と、土台と連動を整える順番を守ることです。
執筆者
[著者情報]
この記事を書いた専門家
田村(タムラ)
ボディメイク実践者 / 行動×身体構造アプローチ自身もかつては、自己流のダイエットやトレーニングで何度も遠回りを経験。
パーソナルトレーニングを受けながら、柔道整復師の専門的指導のもとで身体の使い方・回復・負荷設計を見直し、23kgの減量に成功。その成果として、2025年APF埼玉大会5位・全国11位を獲得。
「気合いや根性」ではなく、身体構造・回復・行動設計を重視した再現性のあるアプローチを強みとする。
Pitch Smart(MLB公式)
投球数・休養・オーバーユース予防の考え方(投球量と休養ルールの根拠)
American Sports Medicine Institute(ASMI)ポジションステートメント
痛みがある場合の投球中止など、ケガ予防の判断材料(疲労サイン・停止基準の根拠)
National Strength and Conditioning Association(NSCA)Youth Resistance Training Position Statement
レジスタンストレーニングの安全性と設計原則(段階設計・監督・負荷の考え方の根拠)



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