「トレーニング歴2年、最近ずっと重量も見た目も変わらない…」
そんな悩みを抱えるあなたへ。2年も真剣に取り組んできたからこそ、今の停滞はもどかしいですよね。その焦り、かつての私にも痛いほど覚えがあります。
結論から言えば、停滞の原因は単純なセット数不足ではありません。科学的トレーニングの最重要指標である「総ボリューム」の管理にこそ、その突破口があります。
この記事は、単なるセット数の正解を提示するのではなく、あなたの停滞期を打ち破るための『トレーニングボリューム調整・実践ガイド』です。
読み終える頃には、なぜ自分が停滞していたのかが明確になり、明日から自信を持ってトレーニングメニューを改善できるようになることをお約束します。
この記事は、筋トレやダイエットを始めたばかりの初心者の方に向けて
ケガや遠回りをせずに体を変えるための考え方と実践ポイントを
筆者自身の実体験をもとに解説しています。
[著者情報]
この記事を書いた専門家
田村(タムラ)
ボディメイク実践者 / 行動×身体構造アプローチ自身もかつては、自己流のダイエットやトレーニングで何度も遠回りを経験。
パーソナルトレーニングを受けながら、柔道整復師の専門的指導のもとで身体の使い方・回復・負荷設計を見直し、23kgの減量に成功。その成果として、2025年APF埼玉大会5位・全国11位を獲得。
「気合いや根性」ではなく、身体構造・回復・行動設計を重視した再現性のあるアプローチを強みとする。
なぜトレーニング中級者は「セット数の罠」にハマるのか?
トレーナーとして活動していると、「筋肥大には週に何セットやればいいですか?」という質問を本当によく受けます。しかし、私はこの質問の裏に「自分の努力が正しいのか不安だ」という心の叫びが隠れていると感じています。
トレーニングを始めたばかりの頃は、やればやるだけ筋肉がつき、重量も伸びていきます。しかし、2年ほど経過した中級者になると、体はその刺激にすっかり適応してしまい、成長が鈍化します。これが「停滞期(プラトー)」です。
この停滞期に直面した時、多くの人が「セット数が足りないのかもしれない」と考え、がむしゃらにセット数を増やそうとします。これが、私が「セット数の罠」と呼んでいるものです。
もちろんセット数も重要ですが、闇雲に増やすだけでは回復が追いつかず、オーバートレーニングを引き起こす危険すらあります。大切なのは、セット数という一つの要素に固執するのではなく、より大きな視点からトレーニング全体を見直すことなのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 停滞を感じたら、まず「今のトレーニングに体は完全に慣れきっている」という事実を受け入れることから始めましょう。
なぜなら、多くの人は「自分の努力不足だ」と精神論に陥りがちですが、停滞は身体が発する正常なサインだからです。このサインを客観的に受け止め、次の刺激を与えるための「計画的な変化」こそが、停滞期脱出の第一歩となります。
停滞打破の鍵は「総ボリューム」。筋肥大の科学が示す新常識
では、計画的な変化とは何でしょうか。その答えが「トレーニングボリューム」という考え方です。トレーニングボリュームとは、単純なセット数ではなく、「重量 × 回数 × セット数」で計算されるトレーニングの総負荷量を指します。
なぜこのトレーニングボリュームが重要なのでしょうか。それは、筋肉を成長させ続けるための絶対原則である「漸進性過負荷の原則」を満たすための、最も重要な指標だからです。漸進性過負荷の原則とは、筋肉に常に新しい刺激(負荷)を与え続けることで、成長を促すという考え方です。あなたの停滞は、この漸進性過負荷が達成できていない、つまり筋肉が現在のトレーニングボリュームに「慣れて」しまった証拠なのです。
このトレーニングボリュームの重要性は、筋肥大研究の第一人者であるBrad Schoenfeld(ブラッド・ショーエンフェルド)博士の研究によって科学的に裏付けられています。博士が行った複数の信頼性の高い研究を統合した分析(メタアナリシス)によれば、「1部位あたり週に10セット以上のトレーニングボリュームは、10セット未満に比べて明らかに筋肥大効果を高める」と結論付けられています。
つまり、「週10〜20セット」という有名な数字は、このSchoenfeld博士の研究から導き出された、科学的根拠のある「出発点」なのです。

【実践ガイド】明日からできる、ボリューム調整3つのアプローチ
トレーニングボリュームの重要性を理解したところで、次に「どうやってボリュームを増やすか」という具体的な方法を見ていきましょう。アプローチは主に3つあります。どれか一つだけが正解というわけではなく、ご自身の状況や好みに合わせて選択、あるいは組み合わせることが可能です。
トレーニングボリューム増加のための3つのアプローチ比較
| アプローチ | メリット | デメリット | 特に有効なケース |
|---|---|---|---|
| 1. セット数を増やす | 最もシンプルで管理しやすい。 | 時間がかかる。オーバートレーニングのリスク。 | トレーニング時間に余裕があり、現在の強度・頻度に体が慣れている場合。 |
| 2. 強度(重量)を上げる | 短時間で強い刺激を与えられる。神経系の発達も促す。 | フォームが崩れやすい。怪我のリスクがやや高い。 | 使用重量そのものが長期間停滞している場合。 |
| 3. 頻度を増やす | 1回あたりの疲労が少ない。筋肉合成の機会が増える。 | ジムに行く回数が増える。分割法の知識が必要。 | 週に1回しか特定の部位を鍛えておらず、スケジュールに余裕がある場合。 |
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: どのアプローチを選ぶにせよ、「一度に一つずつ、少しずつ変える」ことを徹底してください。
なぜなら、私も経験がありますが、焦るあまりセット数も重量も頻度も一度に増やそうとするのが、中級者が陥りがちな典型的な失敗だからです。一度に多くの変数を変えると、何が効果的だったのか分からなくなる上に、怪我のリスクが急増します。まずは1ヶ月、一つのアプローチを試すくらいの気持ちで臨みましょう。
よくある質問:オーバートレーニングやRPEの活用法は?
ここまで読んで、「ボリュームを増やすと、疲労が抜けなくなったりしない?」と不安に思った方もいるかもしれません。非常に重要な視点です。ここでは、そうした疑問にお答えします。
Q1. オーバートレーニングが心配です。どう見極めればいいですか?
A1. 素晴らしい質問です。ボリュームを増やす際は、常に体の声に耳を傾ける必要があります。「朝起きるのが辛い」「関節に違和感がある」「トレーニングへの意欲が湧かない」といったサインが2週間以上続く場合は、オーバートレーニングの可能性があります。
そうなる前に、4〜8週間に1週間程度の「ディロード」、つまり意図的にトレーニングの強度やボリュームを落とす期間を設けることを強く推奨します。ディロードは、筋肉や神経系を回復させ、長期的な成長を促すための戦略的な休息です。
Q2. RPEやRIRという言葉を聞きますが、使った方がいいですか?
A2. はい、中級者以上の方はぜひ活用すべき指標です。
- RPE (Rate of Perceived Exertion): 自覚的運動強度。そのセットが「どれくらいキツかったか」を10段階で評価します。
- RIR (Reps in Reserve): 残り反復回数。「あと何回挙げられたか」を示します。
これらの指標を使うことで、トレーニングボリュームの「質」を管理できます。例えば、「RPE8(あと2回は挙げられる余力を残す)」といった基準を設けることで、毎回のセットで追い込みすぎによるフォームの乱れや過度な疲労を防ぎ、質の高いボリュームを積み重ねることができます。ただセット数をこなすのではなく、「質の高いセットを、どれだけできたか」を意識することが、次のステージへ進む鍵となります。
まとめ:科学を味方に、停滞の壁を乗り越えよう
今回は、筋肥大の停滞を打破するための「セット数」の科学について解説しました。
最後に、重要なポイントを3つだけ振り返ります。
- 停滞打破の鍵は「セット数」ではなく「総ボリューム」の管理にある。
- ボリュームを増やすことが「漸進性過負荷の原則」を満たし、筋肉の成長を促す。
- ボリュームを増やすアプローチは「セット数増」「強度UP」「頻度UP」の3つ。自分に合った方法を少しずつ試すことが重要。
停滞は、あなたがこれまで真剣にトレーニングに取り組んできた何よりの証拠です。そして、それは決して終わりではありません。新しいステージへの扉です。
この記事で得た科学的知識という新しい武器を手に、自信を持ってその扉を開けてください。応援しています。
【次へのアクション】
まずはこの記事を参考に、ご自身の胸のトレーニングの週の総ボリュームを計算してみましょう!
(例: ベンチプレス 80kg × 8回 × 3セット + ダンベルフライ 20kg × 12回 × 3セット = 2400kg + 720kg = 週の総ボリューム 3120kg)
[参考文献リスト]
- Schoenfeld, B. J., Ogborn, D., & Krieger, J. W. (2017). Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis. Journal of sports sciences, 35(11), 1073–1082. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27433992/
- 山本義徳 開発への想い | VALX(バルクス)オンラインストア. https://valx.jp/column/499/



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